『風の谷のナウシカ』が放送されると

更新日:8月24日
『風の谷のナウシカ』が久しぶりに放送されて話題だった。
『風の谷のナウシカ』の放送というと思い出すのが、うちの母親の勘違いである。映画公開の当時、「ナウシカガール」という宣伝キャンペーンがあって、選ばれた安田成美がナウシカの衣装を着たりセットの前に立ったりしていた。これをたまたまテレビで観たうちの母は「なんて可愛い子かしら」と言っていた。そのあと他の番組で宮崎駿のインタビュー見ると「この人面白い」と。
だから関心をもって『風の谷のナウシカ』が放送されると観た。そして「映画は良かったし、なんて上手なのかしら」と感心していた。ナウシカの声が安田成美だと勘違いしたのだ。

これは既に拙書で述べていたことだけども、虫を鎮めるのに綱を振り回したり、その少女が取り憑かれたり、ということでは『風の谷のナウシカ』と『エクソシスト2』は同じである。
もちろんそれらは上辺のことで、『エクソシスト2』は古代エジプト人とバッタの話ではあるし、『風の谷のナウシカ』の元のネタはレイチェルカーソンの『沈黙の春』だ。
文明が崩壊したあとの世界が『ナウシカ』の舞台である。
汚染された土壌に巨大菌糸類の密生地が出来て、そこから猛毒の胞子が発生する。それで焼き払おうとすると、中に群生している巨大な蟲たちが暴れる。人は蟲を殺したいと考える。
しかし、それらは汚染を浄化してのことであり、大地の自浄作用を蟲が守っていた。だから浄化された井戸水で菌糸類を栽培すると、全く毒を出さない。これをナウシカは独自の実験で突き止めていた。
コロナウイルス以前にマスクを習慣付けてくれたのは杉の木である。
もとはといえば、乱伐採を繰り返して、木を切ったまま放置すると山崩れするからと、成長が早い杉を代わりに植えていたのだ。それで山は杉の木ばかりになる。その花粉のため人はマスクつける。自然破壊が原因で。
まるで『風の谷のナウシカ』と同じ構造ということ。
風の谷が軍事大国に侵攻される場面がある。
そして軍事力で威圧され、「王道楽土」建設に協力しろと迫られる。この言葉は1933~34年の侵略戦争スローガンだった。「日本、蒙古、満州、朝鮮、漢」の5族が一体となる「満洲国」が、「王道楽土、五族協和」ということだった。そして殺戮と略奪を美談として言いくるめた。
この歴史を踏まえて描いているのは明らかなのだが、それを共感すべきことだとして宮崎駿を非難していたのが、佐藤誠三郎と佐藤誠欣子という御用知識人夫妻の息子の健志だった。
この人は、最終兵器を用いて蟲を殺し菌糸類を焼き払うのが正しいと説いた。
なのに反対するナウシカは「バカ」とまで罵った。レイチェルカーソンも、生態系を問題にして殺虫剤の濫用を警告したのに、虫を哀れむ感傷的なバカ女と非難した人達がいたのだから、それと同じことなのだろう。
それに、掲載されたのは今は無き極右月刊誌『諸君!』(文藝春秋社)誌上でのことだから、その特色に迎合したのだろう。もちろん親譲りである。前にどこかで佐高信が批判していたけれど、息子ではなく母親の方を問題にしていた。
また同じく『諸君!』誌上で、伊佐千尋というノンフィクション作家(陪審員裁判の体験談『逆転』が有名)が、先述の佐藤欣子について、元検察官の弁護士であるが、この人の理想とする司法は江戸時代の代官という発想だと手厳しく批判していた。
そんなことを思い出した。
それだけ内容が深い映画ということだろう。
ちなみに、かつての拙書はこれである。



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